螺旋階段(別館)
廃墟と旅。古びた建物大好き!
山本 美香 『戦争を取材する』
![]() | 世の中への扉 戦争を取材する─子どもたちは何を体験したのか (2011/07/15) 山本 美香 商品詳細を見る |
この本を読み始めるにあたって、作者が2012年に、戦場で亡くなったという話を聞いた。
「あんなに報道されてたのに?」って思われるかもしれないけど、私、ニュース見ないから、そういう話、知らないんだ…。
序盤で、作者は、以下のように書いている。
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海外取材に出かける私に母はいつも声をかけてくれます。
「薬を忘れないように、おなかを冷やさないようにね」と。いくつになっても親は子どものことが心配なんですね。
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作者は、いつも心配してくれていたお母さんのことを、悲しませることになってしまったんだなぁ…。
作者は戦場の移動診療所を取材して、目の前の患者を救ったり安心させたりする医師の活動に感動した。
それと比較し、ジャーナリストの自分の存在がちっぽけな物に思えた。
けれど、不幸な一家を取材中、「こんな遠くまで来てくれてありがとう。世界中のだれも私たちのことなど知らないと思っていた。忘れられていると思っていた」と泣きながら感謝され、ジャーナリストの仕事を全力でやっていこうと覚悟を決める。
戦争に苦しむ人たちの姿を世界に伝えることで、どうやって救うことができるか、考えるきっかけを作るという使命のもとに、仕事をした。
確かに作者は、使命感を持って仕事をしていたと思う。
本を読んでいると、「戦争は嫌だよね。みんなで平和な世界を作ろうよ。」そんなメッセージが、伝わってくる。
だけど…。
果たして作者は、使命感だけで仕事をしていたんだろうか?
ただ「世界平和のために」という気持ちだけで、危険で不便で、不幸な人が溢れる戦場に、通い続けたんだろうか?
廃墟好きの私は、つい自分と比べてしまう。
実は、戦場は作者を惹きつけて離さない、何らかの魅力を持っていたんではないだろうか?
それが何なのかを知ることは、私にはできない。
だけど、廃墟が私や他の一部の人間を惹きつけてやまないように、戦場は作者の心を惹きつけたのかもしれない。
私はどうしても、そう考えてしまう。
多分、そんなこと考える人、滅多にいないだろうけどね(^^;
どういう理由で戦場に通っていたにしろ、作者の仕事は、多くの人に戦争の悲惨さを伝え、どうすれば平和になるかと考えるきっかけを作ったことは事実なわけで。
私も、うっすらとは知っていたけれど、ゲリラに攫われて兵士として戦う子供達がいることや、戦いが終わった後にも地雷で手足を失くす人たちがいることを、実際の話として読むことができてよかった。
地雷探知犬の話は、読んでてちょっとブルーになった。
優れた嗅覚などの能力を使い、人間が埋めた地雷を探し出す手伝いをしてくれる地雷探知犬。
でも、爆発事故によって、命を落す犬もいるらしい。
この本には「犬は人間にとって大切なパートナー」と書かれているけれど、その犬という種族に、人間はどんな仕打ちをしているだろう。
検索したところ、日本の保健所で処分される犬猫の数は、年間20万頭とのこと。
地雷探知犬は、自分の仲間が人間に大量殺戮され続けていることを知っても、人間のために、命を賭けて地雷を探す手伝いをしてくれるかな…。
他に印象に残ったのは、戦争の映画と現実で大きく違うのは、触覚と嗅覚だということ。
生ぬるい爆風、血や遺体の匂い。確かに、映画や本では、それを実感することはできない。
実感することなく一生を終えられたらいいな、と思う。
戦争についてあまりに知らないので、少しでも知識を得られればと思って読んだ本。
それなのに、なんかちょっとピントがズレた感想になってしまって、ちょっと恥ずかしい。
でもまあ、私は変わり者だから、しょうがない。
同じ本を読んでも、いろんな感じ方をする人がいるんだなって。そう思っていただければ…。
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Posted on 00:12 [edit]
category: 本などの感想
« 旅の歌 | 旅0021_「ダイジョウブ」の国、グアム »
2013
06/17
Mon.
13:52
ケタピンマン | URL | edit
僕は戦場ジャーナリストに憧れますね。
実際行ったら脱走するかもしれませんが。
ハートロッカーという映画の、戦争は麻薬である。
というコピーを思い出しました。
そこにある緊張感などは、平凡な日常にはないものでしょうね。
廃墟にも少し通じる所はあると思います。
2013
06/18
Tue.
00:16
塔子 | URL | edit
>タケちゃん
コメントありがとう。
タケちゃんは、戦場ジャーナリスト、似合うと思うよ。
何があっても、冷静に映像や写真を撮ってそうな気がする。
あまり恐怖を感じなさそう。ていうか、恐怖もまるごと楽しんでるのかな?
冷静でいながら配慮があるから、弱い人の立場に立って、いいこと書きそうだし。
いろんなことを調べるのが苦にならない人だから、戦争の背景とかちゃんと語れそうだし。
まあ、あくまで私から見た印象だから。
「実際やってみたら逃げるかも」っていうのは、誰でもそういう可能性はあるよね。
その場になってみないと、誰にもわからない。
「戦争は麻薬」って、なるほどねー!
そうなの。私はそれを言いたかったの。
私にとって廃墟が中毒性があるように、ある人たちにとっては、戦争はクセになる何かがあるのかもって思ったんだ。
私は廃墟にスリルを求めていないんだけど、それでもやっぱり、戦争と廃墟に、通じるものを感じてしまった。
まあ、私はチキンなので、戦場ジャーナリストになりたいとは、全然思わないけどねw
『ハートロッカー』という映画、検索してみた。
http://eiga-kaisetu-hyouron.seesaa.net/article/136642306.html
http://eiga-kaisetu-hyouron.seesaa.net/article/136805135.html
http://www.amazon.co.jp/dp/B0030XN8VC?tag=naokonh-22&camp=243&creative=1615&linkCode=as1&creativeASIN=B0030XN8VC&adid=1RCBY2P0WWMVG89JHD41&&ref-refURL=http%3A%2F%2Feiga-kaisetu-hyouron.seesaa.net%2Farticle%2F136642306.html
映画を見ずにレビューだけ読むのは邪道だろうけど、この映画を見る機会があるかどうかわからないので、とりあえず概略を知りたくて。
主人公を「戦争中毒者」と言う人と、「そうじゃない、自分のできることを悟っただけだ。」と言う人と、両極端な意見を読んだけど、映画の冒頭に「戦争は麻薬だ」と出てくるってことは、やっぱり戦争中毒者の話なんじゃないかな。
ていうかね。戦争中毒者説の解説の方に出てくる主人公、自分の心情と、相当かぶるんだよね(^^;
私も一生、抱えていくのかなぁ。廃墟という因果な趣味を。
いずれ飽きると思ってたのに。
廃墟が好きという事実に、大義名分が無いことが、辛いっす。
特に、「戦争関係や事故関係の廃墟や場所をすてきと思ってしまう自分は、人として間違っている。」ということを自覚しているだけに、辛いっす。
だから、少しは勉強したいって思ったけど、私には難しいや。
そしてやっぱり、廃墟は麻薬だ。
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